トーク2

 

 

 

 

 

 



+[わけのわからないものをどうやってひきうけるか?]
今の時代っていろんなものや人や思想が飛行機に乗って、インターネットに乗ってすごい量、すごい早さでやってくる時代ですよね。そうなると全部が全部を理解しようとすると追いつかない。わけの分からないものをわけの分からないままなんとか引き受ける、時にはわけの分からないことと距離、間合いを取ったりしてなんとかやっていくような技術とかが必要な時代だと思うのです。わけが分からないと言って殺したり、攻めていってはいけないと思うのです。
この「わけのわからないものをどうやってひきうけるか?」というのはこの10年ぐらいの僕の大きなテーマであり、この星のみんなのテーマでもあるとおもいます。今回、その象徴的な例のひとつとしてドイツ人の学生が意味の分からない日本語の歌を意味の分からないまま覚えて歌っている映像を見せていますが、この作品を見た人がそれぞれ「わけのわからないものをどうやってひきうけるか?」ということをそれぞれの方法で考えてもらうきっかけになればいいな、と思っています。
そしてこれからの美術と美術館の役割のひとつは実はわけの分からないものを引き受ける練習の場ではないか、と思うのです。よく「現代美術は分からない。おもしろくない。」という言い方を聞きますが、実は美術は分からないからこそ意味があるとも思うのです。

+[やるつもりのなかったことをやってみる]
ゴルフなんてまったくやる気がなかったですし、ゴルフをやる人の気持ちもまったく分からない。それに自然破壊だと思って嫌っていたのですが、5年くらい前に、友達のアーティストのオラファー・エリアソンが主催するアーティスト・ゴルフ・トーナメントというのに突然お誘いを受けたんです。まったくゴルフ初心者なのに飛行機代や宿泊代をもってもらってスペインまで行くというおもしろい体験をしたんです。それで行くことが決まってから当時住んでいた横浜のゴルフ練習場で30分だけレッスンを受けたりしました。
ゴルフをやってみておもしろかったことは、一回やったことで、自分が今までうまくコミュニケートできなかった日本のある種のおじさんたちと少し話せるようになったんです。「スペインのPGAコースでプレイしたことあるんですよ」って言ったら、おじさんたちの目の色が変わって、ちょっと話しが出来て話しのとっかかりになるっていう。これもひとつのコミュニケーションのツールなんだなあって思うことがあって。やるつもりのなかったことをやってみたら、変わる人生もあるんだなあと実感しました。そして接点のなさそうな人とコミュニケートする時にはまずこちらから相手のやっていることを理解しようとすることも大切だなあと思いました。それで今回、ゴルフを体験できる場を作りました。美術館にゴルフをやるつもりで来る人はまずいないと思いますが、美術とゴルフ、僕の仕事というのは一見遠くにあるものを結びつける仕事でもあると思うのです。
あとゴルフを習っていておもしろいのは先生のやっていることや本やビデオを一生懸命に見て真似をするというか、自分の体に写さなくてはならない。これは一種のデッサンのような行為だと思うのです。そこが美術に関係していると思います。
そしてゴルフを語る言葉っていうのがおもしろい。人によってまったく言うことが違うのです。クラブを持ってかまえた時の力の抜けた姿勢を人によっては「横断歩道で信号が変わるのを待っているような状態」と言ったり、別の人は「ラーメン屋で並んでいるときのような感じ」と言ったりするのを聞いたことがあります。(それにしてもなぜラーメン屋なのでしょう?)体の姿勢や状態を言葉に置き換える時のセンスがスポーツの世界ならではで僕には新鮮でおもしろいのです。