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齋藤陽道 写真展『宝箱』よしもとばなな@ワタリウム美術館 2013.12.12  toppage12     text & phto by Yuki Okamoto, Edited WATARI-UM







和多利

皆さん、どうもお待たせしました。
そろそろ始めたいと思います。
齋藤陽道さんの展覧会がスタートして、今回が初めてのイベントです。

スクリーンが上のほうなので、だいぶ首が疲れちせてしまいそうですが、今日はよしもとばななさんをお迎えして、2人で書きながら喋っていただきます。
ワタリウムでは初めての経験なので、ところどころ至らないところもあるかと思います。
齋藤さんが書いたのを僕が読んでいこうと思っていますが、鬱陶しかったら言ってください。やめますので。笑…。

後半は質問コーナーを設けますので、何か聞きたいことがあれば考えておいてください。

齋藤 見えづらかったら前へ、前へ…。
よしもと

今日はどうぞよろしくお願いします。

齋藤 ばななさんとは『女子の遺伝子』の表紙に写真を使わせてもらったのがきっかけで…。
よしもと その折はありがとうございました。
齋藤 今回、展示のカタログに文章をお寄せくださいましたが、これが本当に良くて…。
初めて読んだとき、ものすごく心が膨らみました。
カタログが届いたのは今日の数時間前なので、まだほとんどの人が読んでないと思います。
もしよろしければ読んでいただけませんか?
よしもと い。昨日まで声が出ないくらいすげー風邪をひいてて…鼻声だけど読みますよ?
途中で咳き込んだらごめんなさい。
昨日は声が出なかったけど、「明日は筆談だから大丈夫」と思っていたら、朗読とか、書いたものを喋るとか、意外にハードルが高い…。笑
なのでちょっと聞こえづらいかもしれませんが、読みます。
私がこのカタログに寄せた文章です
  [よしもと:『宝箱』P194〜197 "見るということ" を朗読 ]
  [齋藤:朗読内容を手話通訳する]
齋藤 読んでくださってありがとうございます。
よしもと いやー、リハなしだったから噛むよねー。
齋藤 僕も急に手話で表すことになって、しどろもどろでした。
本当に嬉しい文章です…。
よしもと 写真がすばらしいからですよ!
 

…褒め合う2人。

《会場/笑》

  齋藤 見えない。けど、見える…。
まず、僕のことを説明しますと生まれつき聞こえません。
車のクラクションが3m先で鳴って「おや?」と思うぐらいです。
3歳頃から補聴器を使って発音訓練・聴こえの訓練をしてきました。
なので少し話せているみたいです。
自分で実感はできないけれど…。
このことがあるので、ばななさんの文章に「あぁ、似ている」と思いました。
そ して、うまく言えないのですが、(聞こえないことで) "奥" に行けた…と思っています。
こっち側とあっち側を平気で行き来することができる能力というのかな…。
同質にしか見えない、かな?
"ちがう" ということで、落っこちて、でもそこから這い上がるような、取り戻そうとする力というものを思います…。
… ううん、ちょっとまとまらない。
別の話にちょっと飛びます。

最近悲しいことがあったんです。
  よしもと 聞かせてー。
  齋藤 僕にはパートナーがいるのですが、彼女も同じく聞こえなくて、いつもは手話で話しています。
それは何不自由ないし、楽しいです。
  よしもと うんうん。
  齋藤 今、パートナーは入院しているので今日は来れなかったのですが…そのときの流れを話します。
夜、借りていたDVDを返しに行こうと思って、自転車で出かけたんです。
僕が前を走って、彼女は後ろを。
結構な夜で、でもまだ開いているお店があったんです。
それを見ながら、僕は「ほー、まだやっているんだな」とか思った後に、ふっと後ろを向いたらパートナーの姿がなかったんです。
「んん?」と思って…勝手に別の道から行ったのかな?と思ったけど、どうもちがうと。ザワッとして…。
100mくらい戻ったのかな。
  よしもと うんうん。
  齋藤 パートナーが自転車から落っこちて倒れていました。
顔から落っこちて気を失ってた。
なんでそうなったのかわからないのですが。
本人も記憶がないみたいで、聞いてもわからなかったんです。
とにかく倒れていて、目覚めるまで側にいて…10分くらいです。
  よしもと ありゃ…。
  齋藤 結果としては、顎にヒビが入ってその手術をしました。軽症でした。
  よしもと あららら…。
  齋藤 今は病院でぼーっとしてる。
    《会場/笑》
齋藤 思ったのは、すぐ後ろでそのことが起きているのに、気づけなかったということにハッとしました。
聞こえないってこういうことでもあったな、と。
今 、元気なパートナーと一緒にいるときに強く思うのは、「僕はもっと見なくちゃならない」という想い。
聞こえないことを補って余りあるくらいに見えるようにならないと…。
そしてこの想いが僕の写真の行いの原点でもあったな、と思い出したんです。
よしもと まずはじめに、お大事に!
齋藤 はい。
よしもと 彼女はキリッとしたすごくきれいな人。
で、思うに、それは聞こえないから起きたのではない。
反省するところはきっと別で、感じ方のゆるみの問題だと思う。
というのも、子供の誘拐とかって1分で起きる。
見えてても聞こえてても、何かが油断していると起きる。
もう取り戻せない。
そういうときって、実は前の日とかその5分前とかに、何か少しボーッとするような、変に鈍い状態になる。
そのときに気づけるように磨くのは大切だと思う。(何を?)
ところで気を失ったのは大丈夫だったの?
  齋藤 大丈夫です。
事故に関しては、僕もゆるみがありました。
  よしもと もし齋藤くんが冴えた状態にあったら、聞こえなくても何かが虫の知らせで…
たまたま自分が後ろ走ったりするから、やっぱり魔が差したっちゅーの?そういうのだと思う。
でも振り返ったりゾワッとしたりしてたんだから、完全に間に合ってると思うよ!
  齋藤 間に合ってる…。
僕はその間に合うための能力をもっと身につけないと…と、今回のことで思うようになりました。
  よしもと そうかー。
でも、もうかなりイケてると思うよ!
    《会場/笑》
  齋藤 僕はいつも何かを逃していたり、捉えきれていないという想いがあって、そこをどうにかしたいという想いから写真をやっているようです。
とても小さいものや、見えなかったり…
ただ気づいていないだけで、本当はいる存在たちの声をいつも聞き逃していると思って、だから自分が信じたいがために見ていこうとしています。
  よしもと 齋藤くんの写真のすごいところは、自分の目の前にその状況を呼んでいるところです。
自分が受け入れるだけじゃなく、呼んできてる。
   
齋藤 「あ、いる!」っていつも思ってます。
よしもと だってあんなこと、普通は目の前で見せてもらえないもん。
世 界から。
齋藤
よしもと ああいう…。
(展示写真たちを指差す)
だからこそ、出来事の意味はいつもよりダイレクトに齋藤くんを襲ってくる。
↑ちょっとニュアンスがちがうが、これは事故の話ね。
普通は [ 出来事が襲ってくる/現れる→対処する ] の順番だけど、齋藤くんの世界は [ 出来事=意味 ] まで極まっているから大変なんだと思う。
でも極まってる証拠だから、大丈夫。
  齋藤 こわい…。
    《会場/笑》
齋藤 ただ雰囲気やいいかんじ、では撮ってきていないです。
きれいすぎて悲しいと思えるほどの出来事を見ないと、僕の見たい "あらゆる存在が平に立っている境地" に行けないと思っています。
よしもと 齋藤くんの写真は、すごーく厳しいと思う。
ただきれいで、ほんわかしているとは思わない。
きっとみんなもその厳しい美しさに触れたいんだね。
齋藤 さっきの話のような、僕にとって恥ずかしいことや悔やまれること、いろんなものがグチャグチャのドロドロになっている部分があって、その部分が、それでもどうにか少しでもきれいになれたら…と、深いところまで届くような光を求めています。
深海にも届くような光…。
  よしもと それは難しいんじゃ…。
というのは、グチャグチャのドロドロの大きさと光に達する力は、まったく同じ重さだと思うから。
あっち (ドロドロ) がなければ、こっち (光) もなくなるかもしれない。
…筆談トークショーは、意外にみんなの顔を見ないね。
ずっと下を見てる。
  齋藤 ね。
  よしもと 良かったら共にグチャグチャから逃げずに行こう!
  齋藤 はい。
逃げずにいられる寄りどころはなんですか?

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