現代美術作家としてアートコレクターからストリートのスケーターにまで幅広い人気を誇るリチャード・プリンスが書いたエッセイ、小説、レビューなどをまとめた本。いくつものショート・ストーリーの断片をシャッフルして並べたようなこの本、全体から受けるのは雲を掴むような、あるいは煙に巻かれたようななんとも心もとない感覚。例えば“パナマ運河地帯”という自身の出身地にしても、本人が著した文章の中で明言されているにもかかわらず、それを読むものにはどうも今ひとつ真実味が薄い。ましてやその文中にJ.G.バラード(イギリスのSF作家)との旅行のことなどが記されているとあってはその信憑性を疑わざるを得ないではないか。これはフィクションなのかノン・フィクションなのか。しかし、この真偽がないまぜになった曖昧な関係性を美術作品の「オリジナリティ」に置き換えてみると、それこそまさにリチャード・プリンスの作品そのものともいえる。なんとも“らしい”一冊。
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